股関節のクッション役を果たしている軟骨がすり減ってしまったことにより、股関節の痛みや可動域の減少などが起こる変形性股関節症。そのまま放置すると歩けなくなるリスクもあることから、治療は「先手必勝」が肝心。一体、どのような治療法があるのでしょうか。整形外科医が解説します。
目次
治療法は「保存治療」と「手術治療」の2種類
加齢に伴い、発症のリスクが高まる変形性股関節症。初期の頃は、立ち上がるときや歩き始めに、脚の付け根に痛みを感じる程度ですが、徐々に進行すると、何もしていなくても痛みが出るなど、日常生活に大きな支障をきたします。
変形性股関節症の治療には、大きく分けて「保存治療」と「手術治療」の2種類があります。
痛みや違和感を感じたら…。すぐに整形外科へ
股関節の周辺に痛みや違和感を覚えたら、それは変形性股関節症の初期かもしれません。特に次の症状は要注意です。
・歩き始めに、股関節周辺に痛みを感じる
・長い時間歩くと、股関節が痛くなる
・階段の登り下りをすると、股関節のあたりが痛む
こんな症状が見られたら、変形性股関節症を発症しているかもしれません。変形性股関節症は自然に治癒することはありません。放置すると確実に症状が悪化してしまいます。早めに整形外科で診察を受けましょう。
初期と進行期は「保存治療」が基本
変形性股関節症は、初期・進行期と、それ以降の末期で治療法が異なります。
初期の場合は、保存治療が基本。手術など外科的な処置を行わず、股関節の状態を見極めながら、現状に適した運動方法や生活習慣の改善などを継続します。
「保存治療」にはいくつかの治療法があります。
(1)運動療法
股関節周辺の筋肉をトレーニングで鍛えることで、関節への負担や衝撃を和らげます。また、痛みを軽減させたり、進行を抑えたりする効果も期待できます。
特に理想的なのは、温水プールでの歩行です。水中では浮力を活用することができ、関節の負担を軽減することができるからです。
また、スポーツクラブなどでトレーニングをする場合は、負荷が大きすぎるとかえって関節に負担をかけることになるため注意しましょう。
(2)ダイエット
肥満は変形性股関節症の要因のひとつ。1kg体重が増えると、歩くときの股関節への負担は3~4倍になるといわれているため、3~4㎏も股関節にかかる負担が増えます。日常生活で股関節に負担をかけないよう、体重が標準より超過している場合はダイエットをするようにしましょう。
(3)歩行補助装具(つえ)の使用
「畳に座る」「和式のトイレを使う」「布団を敷いて寝る」など、昔ながらの日本式の生活は股関節に負担をかける原因になります。「イスに座る」「洋式のトイレを使う」「ベッドに寝る」など洋式の生活にチェンジすることをお勧めします。
(5)痛みがある場合は薬物療法
痛みがある場合は我慢せず、消炎鎮痛剤を使うようにしましょう。痛みを我慢していると、他の関節に負担がかかったり、歩くこと自体が億劫になって運動量が減少したりします。整形外科を受診し、内服薬や湿布薬、外用薬などを処方してもらい、痛みを抑えるようにしましょう。
「保存治療」は、急場を凌ぐ対症療法
すでに変形性股関節症を発症している、または、進行してしまっている人の場合は、さらなる進行を防止するために保存治療を行います。しかし保存治療は、変形性股関節症を根本から治癒する「根治療法」ではなく、痛みを軽減したり病状の進行を遅らせたりする「対症療法」です。
「手術をできるだけ先延ばしにしたい」「手術は受けたくない」という人で、「まだそれほど症状が進んでいない」という場合には、保存治療で対処できますが、結局のところ、手術を先延ばしにしているに過ぎず、「いつかは手術を受けなければならない」という状態になることも少なくないのです。
保存治療をして、痛みをコントロールできたり、動きに困難がなくなったりしたら、手術治療を行う必要はありません。しかし、「痛みがなかなかおさまらない」「歩きづらさが増している」という人は、進行期から末期へ移行していることが考えられます。この場合には、保存治療ではなく、手術治療が適用になります。
本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。続きはコチラ>>
執筆者
世田谷人工関節・脊椎クリニック
医師 塗山 正宏
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