人工股関節置換術後の身体障害者手帳の取得は可能?
「人工関節置換術後に身体障害者手帳を取得できますか?」と質問されることがありますが、基本的には取得が非常に困難です。医療技術の進歩により、人工股関節置換術を受けていただくと、術前よりも歩行能力が明らかに改善されるためです。
身体障害者手帳とは
身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、 身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書であり、メリットは主なもので以下があります。
- 各種税金面の控除
- 公共交通機関の割引
- 医療費の助成
- 携帯電話の割引
しかし、人工股関節置換術後のほうが、術前よりも歩行能力が明らかに改善することなどから、身体障害者手帳認定制度の見直しが行われ、平成26年4月から認定基準が改定されました。
■上の図をPDFでご覧になる方はこちら
2014年3月まででは、人工関節に置換した方全員に対して、身体障害等級が認定されていましたが、
改定後では
4級を取得するには股関節の可動域が10度以下、徒手筋力テスト2以下
5級を取得するには股関節の可動域が30度以下、徒手筋力テスト3に相当
となりました。術後に「股関節の可動域が30度以下」ということは実際ありません。当院では、筋肉をなるべく切らずに行う手技で行うため、人工関節への置換手術を受けても、健常者とあまり変わらない生活を送ることができる方が増えてきています。
【執筆】塗山正宏 医師
世田谷人工関節・脊椎クリニック
日本整形外科学会認定整形外科専門医